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第3章 情報収集手段の検討

 

1. 気象・海象センサー

沿岸地域の気象・海象データで一次データとして利用できるものは、気象庁の観測網によるデータと海上保安庁が所掌する沿岸気象観測所のデータが主なものである。それ以外にも、運輸省、建設省など省庁、地方公共団体、漁業協同組合がそれぞれの必要に応じデータを取得しているが、これらは対象外と考える。システムはこれら利用可能データを航行船舶が必要な情報に加工して提供する。

航行船舶側からみると、情報として、船舶が直接・間接に受信する気象衛星のデータの他、漁協や気象情報会社のデータがある。しかしながら、沿岸の船舶が利用する気象・海象情報を考えた場合、気象庁の情報を補完する意味で、海上保安庁の沿岸気象観測データは重要な位置を占めているものと推察する。

海事関係者に対して実施したアンケート調査などによると、一部の利用者から、気象庁が発表する情報は、時間的、空間的に利用者が必要する情報よりも粗すぎるとの批判がある。例えば、沿岸海域ごとに現在の沿岸波浪実況図よりもきめ細かい情報提供を期待しているようである。また、海上保安庁のまとめた資料(リモートセンシングに関する調査研究報告書(6))によると、波浪観測について…現状の波浪数値モデルは主として外洋を重点においたものである…としており、さらに、…沿岸波浪モデル、特に内湾については特別なモデルの作成を必要とし、その最適メッシュの検討が必要…と述べている。ただし、この報告書では、必要性の説明が不十分である。

 

波浪関係のセンサーには各種のものがある。これらについて、章末付録の「波浪観測センサー」に記述した。現在、国の機関などで標準的に用いられているものは、設置地点の波浪を観測する超音波式波浪計である。最近、短波帯の電波を用いた短波海洋レーダーが実用に供されつつある。さらに発想の転換をすれば、マイクロ波地上レーダーも波浪観測の一翼を担うことが可能であろう。これらレーダーによる観測の可能性については章末付録を参照されたい。

視程観測は、WMO(World Meteorological Organization)によると目視によるのが基本である。このためか、海洋観測指針(1)には視程観測について記載がないが、航空気象観測指針(2)と地上気象観測指針(3)には視程観測として記載されている。航空気象観測指針によると、空港のRVR(Runway Visual Range)は透過式の視程計で測定する。また、地上気象観測指針によると視程は観測点からの距離が分っている地物・建造物などを参照し目視観測で行う。

航海者にとって視程は重要な項目であるのに情報の提供は非常に少ない。海上保安庁の実施する船舶気象通報のうち、視程の情報を提供している観測所は16カ所であり、この観測はいずれも目視によってなされている。その他の観測施設は無人化されているため視程の情報提供がなされていないが、無人施設において視程情報を提供するには、機器による自動計測が必須である。海上保安庁では後方散乱式レーザー視程計を試用したことがあるが、その時代における技術的な完成度と、可視光帯に対する人の感覚と機器のレーザー

 

 

 

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